中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第348回 2003年2月16日
《たっぷり じっくりの会》桂三歩の段
一、池田の猪買い/桂 雀五郎(雀三郎門下)
六甲山の麓では、近ごろでも野生の猪が出没といったニュースが聞かれるが、池田ではもう猪に遭遇することもなくなってしまったようだ。さらに山奥へ入り、大阪府の北端・能勢の地まで足を伸ばすと、現在でもごくまれに、猪に出くわすことがあるらしい。いまの池田で猪と出会うには五月山の麓、商店街の突き当たりにあるボタン鍋の店へ行くしかないか。
二、青い瞳をした会長さん/桂 三歩(三枝門下)
政府は今年を「訪日ツーリズム元年」と名付け、海外からの観光客増加をはかっているそうだ。観光客にお金を落としてもらいたいという狙いが見える。近年、海外へ出かける日本人旅行者は年間約1600万人なのに対し、海外からの外国人旅行者は三分の一以下の約500万人。しかし日本に住む欧米人は確実に増加中。もっともアジア系の人は昔から日本に多いが。
三、厩火事/林家 花丸(染丸門下)
江戸時代における女性の髪結いさんの登場は上方が早く、西暦1770年代(安永年間)という。江戸の町ではこれより約20年後に女髪結いが増え始めた。元来、女性は自分で髪を結っており、他人に髪結いを任せたのは格のある遊女くらいだったのが、この時代から一般女性にも広まったとか。生活レベルの向上が背景にありそうだ。この噺はもともと江戸落語だが、最近は上方でも演じる噺家さんが増えた。
中入り
四、ズバリ当てま賞(ろ)の二番
/桂 文太(文枝門下)
先月開始の新企画。第一回「い」の演目は『幾代餅』でした。絵姿に惚れて恋わずらいの清蔵、憧れの幾代太夫に対面できたばかりか、ハッピーエンドの結末。サゲは文太師匠の工夫によるもの。さて、今月は「ろ」の巻だが、ネタが少なく混迷。あなたの予想は?
A、『六尺棒』帰宅の遅い息子が締め出しをくらいそうになって一計。
B、『轆轤っ首』養子に行くことになった男、相手はご大家の別嬪さんと聞いて喜ぶが…
C、『蝋燭喰い』ろうそくを知らない村では、その使用法を巡って大騒動…という珍品。珍品好きの文太師匠が挑戦するのか?
D、その他…『老婆の休日』は文珍師作、『六段目』『六歌仙』もこれまた大珍品。
五、隣の桜/桂 三歩(三枝門下)
日本の国花といえばサクラという印象が強いが、サクラは日本にだけあるわけではないし、そもそも古代にはそれほど鑑賞されなかったらしい。中国ではウメを賞美する事情もあり、『万葉集』ではウメの歌118首に対し、サクラは44首。『古今和歌集』で初めて、サクラを詠んだ歌がウメを上回った。江戸時代以降は庶民もサクラを楽しみ、自宅の庭で花見をするまでに。
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