田辺寄席  
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中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介


第350回 2003年4月13日
《たっぷり じっくりの会》笑福亭 岐代松の段

一、牛ほめ/林家 市楼(染語楼門下)

染語楼師匠の実子で、祖父の代から三代続く落語家である市楼さん、田辺寄席初登場。『牛ほめ』は古くから咄本に趣向の見られるネタで、江戸初期の露の五郎兵衛の咄本に、節穴を塞ぐ知恵をほかでも言い出して失敗するという展開がすでに出ている。現在のストーリーが出来上がってくるのは19世紀以降で、初代桂文治の咄本に現在と同じ牛のほめ言葉が見られる。この噺も代々の落語家が練り上げてきたのだ。

二、手水廻し/笑福亭 岐代松(故・六代目松鶴門下)

丹波の貝野村から奉公に来たおもよさんと若旦那が結ばれ、新婦の故郷へ祝言に出向く、という長めの一席『貝野村』の後半を独立させたのがこの噺。そのため『貝野村』では、取り違えの舞台は宿屋ではなく、おもよさんの実家になっている。洗面用具の「ふさようじ」(房楊枝・総楊枝)は柳の木を箸ぐらいに切り、先端を叩き砕いて歯磨きに使ったもの。

三、くっしゃみ講釈/桂 こごろう(南光門下)

覗きからくりで語られる「八百屋お七」は、江戸の町で天和3年(1683)に起こった実在の出来事をモデルとして井原西鶴が『好色五人女』に執筆、その後浄瑠璃や歌舞伎になって広く知られるところとなった。人形浄瑠璃の代表作は『伊達娘恋緋鹿子』(だてむすめこいのひがのこ)で、お七が火の見櫓ヘ上るシーンが有名だが、いまやこの物語も世間ではほとんど知られていないマイナーな話のようで…。

中入り

四、ズバリ当てま賞〜「に」の四番/桂 文太(文枝門下)

先月の第三回「は」は得票も割れる混戦だったが、上演は『八度狸金玉仇討』。古典をベースにして文太師匠が創作した一席だが、はめものも交えるなど古典風の雰囲気がうれしい噺だ。さて、今月はどうなりますか。
a、『二番煎じ』町内で夜回りをする連中、冬の番小屋は寒いというので酒を持ち込んで温もろうと…。
b、『二人ぐせ』お互いの口癖を治すため、一回「禁じ手」の口癖が出たら罰金という決まりを友人と取り決める。
c、『二階ぞめき』昔は上方にもあったらしいが、演り手が減って東京の噺というイメージが強い。珍妙な発想がいかにも落語的な「ニセ」廓ばなし。
d、その他…「に」の候補作、若干。

五、花筏/笑福亭 岐代松(故・松鶴門下)

現在と違って便利な交通手段がなく、マスコミも発達していない時代の相撲巡業は、余興相撲的な色彩が強く、また土俵上でも替え玉や八百長が珍しくなかったらしい。おりしも4月13日は、慶長17年(1612)に宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で決闘をした日だが、千鳥が浜対花筏の決戦は、武蔵・小次郎の決闘のような真剣勝負はどうも期待できないようです。

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