田辺寄席  
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中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介


第352回 2003年6月15日
《たっぷり じっくりの会》桂 蝶六の段

一、ろくろっ首/桂 壱之輔(春之輔門下)

美しい女性の形容として「沈魚落雁」という言葉がある。あまりの美しさに魚は気を失って水底深く沈み、飛んでいる鳥(ここでは雁)も落下する…というもので、東京の五代目志ん生師匠も美女の形容としてよく使っていた。だがこの言葉、元来の中国古典では意味合いが違い、いかに美しくても魚や鳥は、危険な人間が来たと思って逃げる、という意味だったとか。この噺では、器量良しのお嬢さんに重大な秘密が。

二、饅頭怖い/桂 蝶六(故・春蝶門下)

あす6月16日は「和菓子の日」。嘉祥元年(848年)のこの日に当時の仁明天皇が16個の菓子を神前に供え、厄除・招福を祈願した故事に基づき、江戸時代の武家の間にも、菓子を供える慣わしが引き継がれた。これに従い、全国和菓子協会がこの日を制定した。なんにしても「和菓子の日」の前日に『饅頭怖い』が出るとはすばらしい! というのもこのネタ、どこまで紹介してエエのか難しいんですよ…。

三、鬼の面/桂 雀喜(雀三郎門下)

一時は上演が途絶えていたが、雀三郎師匠が二十年ほど前に現在の形に整えて復活させた噺。もともとは奉公に出てくるのは丁稚、つまり男の子だったが、サゲも付け替えて本日のような形に。筆頭弟子・雀喜さんら数名の若手にも伝えられて、今では立派な上方落語のレパートリーの一つとなった。しかし最近の田辺寄席では2月に『池田の猪買い』、4月『牛ほめ』、そして今回と「池田ネタ」づいてるのは何故?

中入り

四、ズバリ当てま賞〜「へ」の六番/桂 文太(文枝門下)

第五回「ほ」では芝居噺『本能寺』が登場。明智光秀の、織田信長への謀反を題材とした歌舞伎『三日太平記』を基にした噺だが、本家本元の歌舞伎が演じられなくなり、落語のほうに作品が残ったという貴重な一席だった。ふんだんに鳴り物が入るので楽屋のお囃子さんたちも大忙し。さて、今月の「へ」は何が出る?
a、『べかこ』旅興行で難渋した噺家が、なんとお城のお姫様の前へ。
b、『平兵衛野盗伝奇』文太師匠による贋作芝居噺の一つ。盗賊・口縄の平兵衛は処刑されるのか。
c、『へっつい盗人』金はなくても祝いはできる…と、友達二人が盗品での引越し祝いを目論む。
d、その他…「へ」で始まるネタは少なそう。

五、猫の忠信/桂 蝶六(故・春蝶門下)

歌舞伎でも有名な『義経千本桜』だが、その初演は延享四年(1747年)、人形浄瑠璃としてだった。この噺でいう「千本のタテ」とは、人形を伴わない素浄瑠璃として、千本桜を初段から通して語ること。噺の舞台も浄瑠璃の稽古屋となっていて、素人の稽古事としても千本桜が馴染み深かった雰囲気がうかがえる。狐忠信の逸話は「川連法眼館」の場に登場。

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