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中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介


第354回 2003年8月10日
《たっぷり じっくりの会》笑福亭 猿笑の段

一、長短/笑福亭 たま(福笑門下)

漢字の「長」には、ながい・おおきいといった意味のほか「すぐれている」という意味合いもある。「性格的長所」などはこの例。ところがいっぽう、「むだなもの・あまりもの」という意味もあって「無用の長物」というのはこちらの例になる。「長」という文字、ニュアンスとしては良いのか悪いのか? 「気が長い・短い」という人の性格も、どちらが良い・悪いというものではないはずだが。

二、たがや/笑福亭 猿笑(故・六代目松鶴門下)

猿笑さんは東京出身。サラリーマン・板前を経た後、不惑を過ぎて松鶴師匠に入門した。上方落語界で唯一、江戸落語を演じる貴重な存在である。本日の二席も生粋の江戸落語。「たがや」は江戸時代・隅田川の川開き当日、権勢を誇った武士と桶職人とのトラブルを描いた噺。この川開き、いまは7月下旬の土曜日だが、江戸時代当時は旧暦の5月28日だった。

三、崇徳院/桂 文昇(文枝門下)

良家の若旦那とお嬢さんが出会う高津神社は、江戸末期の地誌によれば絵馬堂の茶店からの眺めもよく、境内には有名な湯豆腐の店もある、浪花名所のひとつだった。そんなイメージは明治期に入っても続いていたはずで、若い男女の出会いには相応しい場所だったのである。地誌『浪華の賑ひ』は、高津さんについて「神社の名前は高津だが、境内の湯豆腐の値段は至って低い」とシャレた文句で紹介している。

中入り

四、ズバリ当てま賞〜「ち」の八番/桂 文太(文枝門下)

第七回「と」は『刻うどん』、選択肢の中では最もポピュラーなはずだが、中トリに前座ばなしは出ないはず、との常識に邪魔されて?投票はa〜cの中で最少だった。知識があるがためにかえって判断を誤る、てなことが(演題予想はそんな大層なもんではないですが…)日常でもよくあるものです。さて、今回は?
a、『千早ふる』人間、ものを尋ねられて「知らん」とは言いにくいもので。文太師匠オリジナルのギャグ満載。
b、『茶目八』浅ましい幇間にひと泡吹かせてやろうと、旦那とお妾さんが一計を案じる。
c、『千亀利屋騒動』東京移入。易者から死期を宣告された質屋の若主人が、生前に行うこととは。
d、その他

五、怪談牡丹灯籠より お峰殺し/笑福亭 猿笑(故・六代目松鶴門下)

三遊亭円朝の作品。明治17年(1884)に円朝口演の速記として刊行されたが、これが日本での速記本の最初とされる、記念すべきものである。円朝は明治33年(1900)の8月11日に62歳で没しており、あすが命日。おりしも本日、円朝が眠る東京・谷中の全生庵では「円朝まつり」が行われている。

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