中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第357回 2003年11月9日
《たっぷり じっくりの会》笑福亭三喬の段

一、平林/桂 まん我(文我門下)
千里万博公園内の国立民族学博物館で、11月25日まで開催中の特別展「西アフリカ・おはなし村」は、なかなかユニーク。衣類や木製品など従来の博物館らしい展示に加えて、毎日、西アフリカの昔話が語られており(土日祝には楽器演奏もある)、それが重要な「展示品」という趣向。口承文芸に興味のある方にはお勧めか。『平林』は江戸初期の噺本に原話が載る古い噺。昔話同様、長い間語り継がれてきた一席だ。
二、首の仕替え/笑福亭三喬(三喬一門)
この落語を知らなかった頃、初めて演題を聞いて連想したのは、阪神タイガースの監督人事だった。その当時は数年でコロコロと監督の首がすげ替えられていたので…。今年は18年ぶりの優勝も達成し、長期政権かと思った途端に星野監督が退任。健康上の理由としているが、どうもそれだけではないとの憶測もあり…。「落語と関係ない」と言われそうだが、この噺もタイムリーな話題の挿入が大切ということで。
三、ゴーイング見合いウェイ/月亭 遊方(八方門下)
最近は恋愛結婚が大多数で、見合い婚はとても減ったらしい。結婚が絶対的なものではなくなったのと、世話好き・仲人好きという「他人のプライバシーに厚かましく介入してくる人」が減ったためではないか。この噺に登場するオバちゃんなどは今どき貴重な存在だ。堅苦しいお見合いは減少した今日だが、合コンなど「見合いのようなもの」は依然健在とか。
中入り
四、ズバリ当てま賞〜「る」の十一番/桂 文太(文枝門下)
先月の「ぬ」の十番は贋作『抜け蟹』でした。参加者の声をみると、『盗人の仲裁』を予想して「その他」にした方もあったようで。ちなみに「その他」に関しては「演題を示さんように」と師匠から指令が出ております。さて、今月の演題は「る」で始まる一席…って、そんなんある? 予想するお客さんも困るでしょうが、いちばん困ってるのは文太師匠でしょう。
a、『類聚集覧』妖怪たちが集まって百物語を始める…という怪異譚。
b、『ルイ・アームストロング物語』昔、小南陵氏が講談として演じたことがあるらしい、ジャズの巨人の逸話。
c、『瑠璃壺芝居』芝居噺。大名家の家宝である瑠璃壺を付け狙う一味が。/d、その他
五、仏師屋盗人/笑福亭三喬(三喬一門)
仏師は仏像を作る職人だが、明治維新前までは、とくに京都の仏師といえば権威のあるものだった。外出時は法衣を着て小刀を帯び、やはり小刀を携えた弟子が供に従ったという。神聖な仏を造るという誇りを持っていたのだが、そうでない仏師も昔からいたようで、時代は遡るが狂言の『仏師』には怪しげな仏師が登場する。この噺に登場する仏師、腕は確かなようだ。
|