中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第358回 2003年12月14日
《たっぷり じっくりの会》桂坊枝の段

一、厄払い/桂 吉坊(吉朝門下)
「江戸と上方では厄払いの文句が違う」と米朝師匠もマクラで語っているが、ものの本によると江戸時代は回る頻度も違ったようだ。「京・大坂は節分の夜だけ回ってくるが、江戸では文化年間以降、大晦日・正月六日・同十四日と三度来る」と書かれている。文句にもさまざまあり、落語でも「役者尽くし・花尽くし」などの例が出てくるが、古くは「旦那住吉ご参詣、七福神の船遊び」といったものもあった。
二、田楽喰い/桂 阿か枝(文枝門下)
忘年会シーズン到来。最近は不況の影響か、「居酒屋で食べ放題・飲み放題コース」も増えているそうだが、そういうのはたいてい制限時間があり、「せわしない」という不評もあるそうな。この噺で描かれる酒宴、酒は兄貴の家で飲み放題。ただしアテは田楽だけで、こちらは食べ放題ではなく「ん」を言った数だけ配給されるというのだから、時間制限はないがゲーム方式の個数制限つき宴会というところか。
三、野晒し/桂 坊枝(文枝門下)
最近の国際調査では、日本人の年間労働時間がアメリカとほぼ同じ長さに縮まったとか。しかし計上されないサービス残業が増え、米国では労働時間が増加していることを考えると、単純には喜べない結果だ。その一方、テレビ視聴時間では日本は世界一。日本人は多忙なのかヒマなのか? たまにのんびり釣り糸を垂れるなら程よい気分転換だが、この噺の男のように血眼で骨を探しに行ってはリラックスできない。
中入り
四、ズバリ当てま賞〜「お」の十二番桂 文太(文枝門下)
先月は「る」の十一番、もともと「る」で始まる落語など皆無に近いだけに何が出るのかと思ったが、結果は文太師匠自作の芝居噺『瑠璃壺芝居』だった。さて、今月は「いろは」順なら厳密には「を」だが、そこは鷹揚に「お」ということで、候補作は次の通り。
a、『親子酒』先に帰宅した親父が玄関で寝てしまった頃、息子はうどん屋にからんで迷惑千万。
b、(『大江山酒呑童子』より)『鬼切丸由来』先月同様、芝居噺。源頼光が四天王を引き連れて大江山へ酒呑童子退治に向かう。
c、『お茶汲み』東京移入。女郎が涙の代わりにお茶を活用する策略に出たが…。
d、その他
五、胴乱の幸助/桂 坊枝(文枝門下)
宝暦11年(一七六一)4月、桂川で帯屋の長右衛門と隣家の娘お半の死骸が発見された。殺害されたとの見方が強かったが、齢の離れた二人だけに、ただならぬ仲になって心中したとの噂も広まった。その噂が事件直後から芝居に仕組まれ、その集大成のような形で安永5年(一七七六)に初演された人形浄瑠璃が『桂川連理柵』である。のちに落語にまで仕組まれるとはさすがに予想外だったろう。本年の大トリ。
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