
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第366回 2004年8月15日
《たっぷり じっくりの会》桂 む雀の段

一、強情灸/笑福亭 由瓶(鶴瓶門下)
元来は江戸の落語で、上方でよく演じられるようになったのはごく近年か。こちらにはもともと『やいと丁稚』という同趣向の噺があったが、聴く機会もなくなってしまった。『強情』という一席も、もとは東京の落語が上方に入ったもので、「強情」な性格というと江戸っ子の気性というイメージが強かったようだ。ちなみに石川五右衛門が京の三条河原で処刑されたのは、1594年の旧暦8月23日とされている。
二、谷風の情け相撲/旭堂 南湖(南陵門下)
南湖さんからも説明があるかもしれないが、名横綱として名高い谷風梶之助、名跡は二代目にあたる。仙台出身で、感冒のため46歳で現役中に死没した。横綱になったのが40歳というから、今より力士の現役寿命がかなり長かったようだ。江戸の本場所で63連勝、京・大坂場所も含めると98連勝という。この物語は落語でも『佐野山』と題して演じられるが、今日は本家本元の講談でお聴きいただきましょう。
三、雨乞い源兵衛/桂 む雀(故・枝雀門下)
今年は猛暑ながら局地的な豪雨も多く、雨乞いの必要はなさそうだが、昔から日本に限らず世界各地では様々な雨乞い儀礼が行われた。日本では山頂で火をたく、踊りで神を慰める、社殿にこもって祈願するといったものが多い。中には風変わりなものもあり、牛馬の首を神聖な滝壷などに沈め、神仏を怒らせて雨を呼ぶという儀礼もあった。同様の例として、神仏の像を水中に沈めるのもある。〈小佐田定雄・作〉
中入り
四、ズバリ当てま賞〜「ね」の二十番/桂 文太(文枝門下)
先月の「つ」は、江戸移入の『つるつる』と夏の噺『次の御用日』にほぼ得票が割れたが、結果は『つるつる』の口演。江戸の原作では多少後味の悪さも残るため、文太師匠は脚色の上、サゲを改変するなどした。おおむね好評だったようだが異なる意見もあり、つくづく万人を得心させるのは難しいと感じる。今月の「ね」は候補作の演題が「揃え」になっているようで。
a、『猫災』正式な演題は『猫の災難』。友達の酒を独り占めするため、言い訳に猫を利用。
b、『猫忠』正式な演題は『猫の忠信』。芝居『義経千本桜』のパロディで、原作の狐が猫に。
c、『猫定』正式な演題は…そのままです。ばくち打ちの男が大変な猫好きで。
d、その他
五、七段目/桂 む雀(故・枝雀門下)
『仮名手本忠臣蔵』七段目・一力茶屋の場では、大星由良助が縁先で密書を読む際に縁の下の斧九太夫と二階座敷のおかるに覗かれるシーンが、三人の役者が揃って見栄えのする場面。その折、手紙を読まれた由良助が秘密保持のため、おかるに身請けを持ちかけるのである。おかるの兄・寺岡平右衛門は史実の寺坂吉右衛門がモデルだが、どうやら名前を借用しただけか。
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