
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第368回 2004年10月17日
〜文枝師匠の『船弁慶』を聞く会〜

一、動物園/桂 かい枝(文枝門下)
球団合併でストにまで至った今年のプロ野球。パ・リーグの新機軸、3球団によるプレーオフは熱戦が続き、ひとまず成功を収めた。シーズン2位の西武が優勝し日本シリーズへ。セ・リーグを守りの野球で制覇した中日との対決は、今夜が第2戦である。阪神が広岡・西武と対戦した一九八五年のシリーズは、いまだに思い出深いが…。次に「トラとライオンの一騎打ち」が見られるのは、いつなんでしょうか。
二、阿弥陀池/桂 文華(文枝門下)
阿弥陀池・和光寺の創建については『お血脈』の冒頭でも語られるような伝承が伝わるが、それはあくまでも伝説。元禄七年(一六九四)、四天王寺での善光寺出開帳がきっかけとなり、堀江に堂が構えられたのが始まりである。寺の俗称ともなった、寺内の池の中心にある「放光閣」と呼ばれる宝塔は戦災後の再建だが、灯は消えたら善光寺から移すのがしきたりで、再建時も信州から火をこの地へ運んだという。
三、ズバリ当てま賞〜「ら」の二十二番/桂 文太(文枝門下)
前回は「その他」から『南京屋裁き』の一席。選択肢中では最小ながら、普段よりは「その他」への投票が多かった。今月の演題は?
a、『らくだ』ご存知、屈指の大ネタ。文太師匠は半ばまで演じている。
b、『蘭方医者』不思議な趣の珍品。蘭方はオランダ医学のこと。
c、『嵐雪抄伝』芭蕉に師事した江戸前期の俳諧師・服部嵐雪伝の新作。
d、その他
中入り
四、小言幸兵衛/桂 文也(文枝門下)
外国の昔話を語りで楽しむという催しに行った(もちろん日本語だが…)。中に、何にでも文句をつけて小言を言う親仁さんの話があり、初老男性が口うるさいのは万国共通なのかと再認識。ただ、昔話では文句を言われる妻が腹を立てて夫と役割を交代し、その結果親仁さんは妻の家事労働の大変さを認識するのだが、落語では幸兵衛さんの小言と妄想が止まらない。まあ、教訓的でないのが落語の良さでしょうが。
五、船弁慶/桂 文枝(文枝一門)
源義経都落ちの物語は早くから文献に残されており、大物浦(現・尼崎市)から西国へ向けての出船も『吾妻鏡』の一一八五年11月6日条に載っている。そこに平家の怨霊を加えた物語として能『船弁慶』が作られ、上演されたのは、おおよそ今から五百年ほど前の時代。明治18年(一八八五)には新歌舞伎十八番の『船弁慶』も作られた。こちらは11月に大阪松竹座でも上演されるので要チェック。落語の終盤で演じられるのは、能で見られる平知盛と弁慶の場面のパロディなので、能の演出に即し、その場面に三味線は入らない。文枝師匠は一九九七年三月の第二七八回以来、七年ぶりの田辺寄席登場。円熟の芸が楽しみです。
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