
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第369回 2004年11月21日
〜春団治師匠の『高尾』を聞く会〜

一、チリトテチン/桂 春菜(春団治門下)
なにわの伝統野菜がこのところ注目されている。「寄合酒」誌上にたびたび登場する田辺大根も、もちろんその一つだが、ほかにも天王寺蕪(かぶら)、勝間南瓜(こつまなんきん)、毛馬胡瓜など、いろいろあり。12月4日には難波・湊町で伝統野菜のイベントが、12日には地元で田辺大根フェスタが開かれる。野菜に限らず、食べ物は新鮮なのがいちばん。カビの生えた豆腐は堪忍してほしいものだ。
二、八五郎坊主/桂 春雨(春団治門下)
この噺の中でも「つまらん奴(やっこ)は坊主になれ」などと言われているが、どうもことわざには、坊さんを良いように言ったものは少ないようだ。「三日坊主」「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」「坊主丸儲け」など…。「駕籠に乗って道中できるのは医者か出家」などは、お坊さんを肯定的に評価した貴重な例かも。お寺は落語会の会場としてもよく使われていてご縁も深いのに、こんなんで大丈夫なんでしょうか。
三、一文笛/桂 春若(春団治門下)
「一文」というのは、つまり小銭の代名詞で、一文笛は、辞書ふうに説明すれば値段が一文ぐらいの、安く粗末なおもちゃの笛ということになる。もっともこの噺の舞台設定は明治以後だから、実際ここに登場する一文笛の値段が、一文のはずはないのだが。ほんのわずかの小銭、としての用例では「一文なし」「一文惜しみ」といった言葉がなんとか生き残っている。桂米朝師匠の、昭和三十四、五年ごろの作。
中入り
四、ズバリ当てま賞〜「む」の二十三番/桂 文太(文枝門下)
前回の最多得票は珍品『蘭方医者』だったが、高座にかかったのは二番人気『嵐雪抄伝』。講談をもとに脚色された、人情噺風の一席だった。『らくだ』より投票が多かったあたりはさすがだが、「その他」が12票とは意外。「ら」の演題はそうそうないと思うのだが。大穴狙いの人が増えたんでしょうか? さて、今月の演題は。
a、『無筆の棒屋』チラシによると、どうやら町内に棒を売る店が開店した様子…。初代春団治も演じていた。
b、『無妙沢』移入ネタ。能勢の妙見山へ参詣して道に迷った男が、偶然にも新町の遊女と再会。
c、『向う付け』こちらも無筆を扱った噺。世話になった旦那の葬儀で、参列者の帳場を任されるが。d、その他
五、高尾/桂 春団治(春団治一門)
高尾太夫は江戸吉原の三浦屋で名乗られた太夫の名で、落語家同様、一流の太夫が代々襲名した。そのため高尾を名乗った太夫は七人いたとも、また十一人いたとも言われ、誰が何代目なのかもはっきりしない。そんな中、この噺に出てくる高尾は俗に四代目とされている。「反魂香」は中国の故事に由来する、想像上の香。死者の魂が戻ってきて姿を現すというのだが。
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