
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第370回 2004年12月19日
〜五郎師匠の『中村仲蔵』を聞く会〜

一、商売根問/露の 吉次(五郎門下)
今年大増殖し、今も後を絶たない「オレオレ詐欺」。最近は「オレオレ」と名乗る単純なものは姿を消し、警官や弁護士を装って大金を振り込ませる。そのため警察も、呼称を「振り込め詐欺」に代えたとか。なんでも詐欺集団内部に、セリフを細かに記したマニュアルまであるらしい。それだけの知恵と労力を使って起業でもしたら儲かるのに。地道に商売に励んでほしい。
二、へっつい盗人/露の 団六(五郎門下)
へっついはご承知のように竈(かまど)のことで、古くは「おくどさん」とも言った。かつて大阪では、年回りの悪い時にへっついの位置を変えたり修繕したりすると災難に遭うとの俗信があり、元来のサゲは、なんとか盗み出したもののバレて結局損をした二人が「へっついさんいろうた祟りや」というものだった。今では分からないため、盗みに入ってヘマをするあたりで切るのが普通になっている。
三、ズバリ当てま賞〜「う」の二十四番/桂 文太(文枝門下)
前回の口演『無妙沢』は江戸落語『鰍沢』を文太師匠が移入したもので、開口〇番の三題噺とも関連。今月「う」の演題は候補多数。
a、『厩火事』夫婦の愛情を確かめるために、仲人が持ち出す作戦が秀逸。
b、『浮世根問』ことばの由来をはじめ、とにかく色々な疑問・質問を投げ掛ける男が登場。
c、『鰻の幇間』定まった勤め先のない太鼓持ち、俗に「のだいこ」が登場する話。
d、その他
中入り
四、小噺と百面相/露の 団四郎(五郎門下)
外国の昔話を語りで楽しむという催しに行った(もちろん日本語だが…)。中に、何にでも文句をつけて小言を言う親仁さんの話があり、初老男性が口うるさいのは万国共通なのかと再認識。ただ、昔話では文句を言われる妻が腹を立てて夫と役割を交代し、その結果親仁さんは妻の家事労働の大変さを認識するのだが、落語では幸兵衛さんの小言と妄想が止まらない。まあ、教訓的でないのが落語の良さでしょうが。
五、中村仲蔵/露の 五郎(五郎一門)
『仮名手本忠臣蔵』五段目・山崎街道の場に登場する斧定九郎役を工夫し、絶賛を博したのが江戸の歌舞伎役者、初代中村仲蔵。非常に興味深い役者なのは間違いなく、歌舞伎史でもよく研究される。仲蔵は生涯に八回定九郎を演じているが、その初演は明和三年(一七六六)で、扮装を工夫し、役柄を考えての写実的な演技が当たった。天明七年(一七八七)には大坂でも定九郎を演じている。さらに後の時代に与市兵衛・定九郎の早替りの流行などがあり、現行歌舞伎の演出は仲蔵初演の頃とかなり変わっている。つまりこの落語には、古風な本来の登場のしかたが語り伝えられているわけだ。積極的に芝居噺に取り組む五郎師匠の熱演に期待。
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