
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第372回 2005年2月27日
〜春之輔師匠の『もう半分』を聞く会〜

一、転失気/桂 壱之輔(春之輔門下)
この噺に出てくる『傷寒論』は実在の医学書。中国・後漢の時代というから、西暦25〜250年のころに最初の作成がなされ、宗の時代・1065年に編纂されたものが広く行き渡った。日本でも江戸時代にはこの解説書が流布したという。さすが落語は、事実にのっとっているもんですな。ただしその中に「転失気」が出てくるかどうかは確かめておりませんな。
二、にぎやか寿司/桂 一蝶(故・春蝶門下)
この冬ヒットした商品に、一人用の鍋セットがある。使い捨てのアルミ碗に具材が載り、だしがついている。単身赴任者ら一人暮らしの人が買うのが定番だが、家族それぞれがちゃんこ鍋、豆乳鍋、うどんすき…と、好みの一人用鍋を食べるというのもあるらしい。「鍋は大勢でつつくもの」という固定観念を逆手に取ったところがヒットの秘密か。寿司屋に一人で入ったときぐらいは大勢の客と…。〈桂三枝・作〉
三、ズバリ当てま賞〜「の」の二十六番/桂 文太(文枝門下)
前回は『いらちの愛宕詣り』。文太師匠が若手の頃から得意にし、NHK新人演芸大賞受賞時も演じた一席。今月の「の」で始まる演題はわりあい多いが、高座にかかるのはどの噺か。
a、『軒づけ』素人義太夫華やかなりし頃は町内に何人もの太夫さんが。
b、『野ざらし』もとは江戸の噺。隣家の主人が釣りに行って余禄に預かったので…。
c、『野崎詣り』春先の一席、参詣は船か陸路か。
d、その他
中入り
四、音曲漫才/姉様キングス〜桂あやめ(文枝門下)・林家 染雀(染丸門下)
ひと昔前には音曲漫才というのもよく見られたが、こういった芸者姿のコンビはさすがになかったのではないか。特に染雀さんの女装芸者姿が強烈に印象に残るので、文字通り「いろもん」のイメージになってしまうが、やってることはなかなかの本格派である。都々逸、数え歌など今では聴く機会も減った、音曲漫才の王道が楽しめる。トリの前に出演するには最適。
五、もう半分/桂 春之輔(春之輔一門)
もとは東京の噺で、『五勺酒』という別題もある。おばあさん落語で売った新作派の五代目古今亭今輔師匠が、得意にして演じた古典のひとつだった。東京では千住の小塚原、または永代橋が舞台になるが、春之輔師匠は大阪に置き換えた上、上方落語らしくはめものを交えた演出にしている。ストーリー展開で聴き込ませる、文太師匠いうところの「怪談風落とし噺」といった一席でしょうか。
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