
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第380回 2005年10月16日
《新・じっくりたっぷりの会》桂珍念の段

一、田楽喰い/笑福亭 鉄瓶(鶴瓶門下)
田植えの時に笛・太鼓を鳴らして田んぼの畔で歌い、舞った芸能が田楽である。その中に高足という、竹馬のような棒に乗って踊る演目があり、豆腐の串刺しがその形に似ているところから、これを田楽豆腐、略して田楽と呼ばれるようになった。つまり元は芸能の名前だったのだが、芸能のほうは早くに廃れ、今では保存会の演じる民俗芸能でしか見られない。食べ物の名前として残っただけでも慶ぶべきか。
二、紙入れ/桂 珍念(文珍門下)
本来は「鼻紙入れ」、略して紙入れ。辞書によれば、ラシャや革張りで、二つ折り、または三つ折り。鼻紙のほか薬、小楊枝、金銭も入れた、とある。もともとは小物入れにお金も入れていた、というわけだ。それが明治期以降、紙入れといえば財布を指すようになった。何を入れても構わないのだが、人妻からの手紙を忍ばせておいたことから、大変な心労が持ち上がる。
三、羽柴の毒味(神崎京一・作)/森乃 福郎(福郎一門)
出世街道を走る木下藤吉郎は天正元年(一五七三)から羽柴秀吉を名乗り、信長の死後は次第に勢力を拡大、天正14年には太政大臣となって豊臣姓となった。加藤清正、福島正則らは天正11年の賤ヶ岳合戦で功があり「賤ヶ岳の七本槍」と呼ばれた家臣。そんな歴史上の人物を扱った、講談のような雰囲気も感じさせる一席だが、作家との共同作業で最近福郎さんが手がけている、新作落語のひとつである。
中入り
四、ズバリ当てま賞〜「え」の三十四番/桂 文太(故・五代目文枝門下)
文太師匠が演じるネタの傾向をよく知る田辺寄席のお客さん、9月は『五両残し』『孝行糖』という、あまり出ない演目を多数の人が予想。ところが高座にかかったのは、大ネタだが一般的な?三番人気の『高津の富』だった。いやー、見事に裏をかかれましたな。言うまでもなく故・文枝師匠の十八番だった。さて今回は。
a、『閻魔堂綺譚』恨みから出るのではなく、男を恋い焦がれて出てくる女の幽霊が登場。
b、『延陽伯』言葉の難しいお嬢さんを嫁にもらうが、早くも相手の名前を聞き出すところから苦労する。c、『江戸荒物』文太師匠が若手の頃によく演じていた噺。東京ばやりに目をつけて始めた、商売の工夫とは。
d、その他
五、親子茶屋/桂 珍念(文珍門下)
先月、北海道内の町立小学校の校長昇任試験で、受験していた教頭が小論文でカンニングをして発覚。ふだん子供にはどう指導しているのだろうか。その言い訳は「あまり恥ずかしい文章は書けないと思い…」、これでは落語のサゲにならない。「茶屋遊びはもってのほか」と息子に意見していた親父さん、自分の秘密が明るみに出た瀬戸際で、どんな言葉を発しますか。
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