
中川 桂(芸能史研究者・大阪大学非常勤講師)による
演題紹介
第371回 2005年1月23日
〜福団治師匠の『しじみ売り』を聞く会〜

一、酒の粕/桂 福車(福団治門下)
災害が相次いだ申年も去り、明けて酉年の初席はめでたく酒の話から。「酒」という漢字は古代中国で初めて酒が造られたのが酉年だったことから、との説もあるそうな。日本でも古来、酒は一人で飲まず、神事や宮廷行事など、集団儀礼の中で飲むものだった。だから正月に酒を飲むのも故あること。めでたい席にはつきものなのである。飲めない人は、少しばかりの酒の粕で酒席に付き合うのはどうでしょうか。
二、二人旅/小福改め 二代目桂 福楽(福団治門下)
正月明けの新聞には、毎年恒例の初詣での人出が載っている。全国ベスト3は、1位の明治神宮をはじめ関東圏の寺社が占めるが、京都の伏見稲荷が4位、大阪・住吉大社が6位に。伊勢神宮はベスト10に入っていないが、江戸時代以来、伊勢参宮の人気は絶大なもの。この噺も伊勢への道中が舞台だが、福楽さんが東京の噺を移入し工夫を加えた一席と思われます。
三、ズバリ当てま賞〜「ゐ」の二十五番/桂 文太(文枝門下)
前回は『厩火事』、僅差ながら投票数は一位だった。火事が題材の噺が出たのも奇しき因縁か…。今月「ゐ」は普通に「い」とお考えを。
a、『いらち俥』虚弱な人力車夫と荒っぽい車夫との対照の妙。
b、『祝いのし』家主の息子に婚礼の祝いをして、腹を満たそうと…。
c、『いらちの愛宕詣り』落ち着きのない男は神信心も風呂屋へ行くのも大変。
d、その他
中入り
四、マジック・パフォーマンス/桂 朝太郎(米朝門下)
最近はコミカルなマジシャンがテレビでも人気で、正月番組でマジックを見る機会はひところより増えた気がする。タネは多彩で、大掛かりな舞台装置を使うステージ・マジックもあれば、トランプなど小物や日用品で見せるテーブル・マジックもある。朝太郎さんのは後者の代表的なもの。覚えれば宴会にも役立ちそう。
五、しじみ売り/桂 福団治(福団治一門)
先日、久しぶりに今宮さんの十日戎にお参りした。今年は9〜11日の3日間で約120万人が訪れたというだけに、一月十日の本戎も大変な人出。その日の参拝者は54万人に達したという。混乱を避けるための一方通行は当然のこと、入場制限も行われていた。吉兆と呼ばれる縁起物を授与する社務所には「偽札警戒中」との貼り紙が目立ち、今の世相を感じた。偽札でバチは当たっても、福は来ないに違いない。
そんな十日戎の風景から始まるこの噺は、鼠小僧次郎吉を主人公とした講談が出典。講談では『汐留の蜆売り』の題で演じられ、店の親方が実は鼠小僧、となる。落語化したのは講釈師の経験がある五代目志ん生といわれる。人情噺を得意とする福団治師匠の充実の高座を。
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